紙文化からの脱却(2)〜 ペーパーレス化の課題と解決策

ペーパーレス化を進めるには、業務スタイルを紙中心からデジタル中心へ移行する必要があります。自社における業務を大きく「社内業務」と「対外業務」に分類し、それぞれの業務ごとに課題を洗い出し、ペーパーレス化に向けた解決策を検討するのがよいでしょう。

ペーパーレス化の課題

ペーパーレス化の推進には、まず紙ベースで行っている業務を洗い出し、それら業務ごとにデジタル化の検討を行います。

社内業務

社内業務では、見積書の作成・承認などの紙の書類や伝票などによる申請や承認の作業を、社外からも利用できる(クラウド)のワークフローシステムを導入することで、ペーパーレス化とテレワークの対応が容易となります。

対外業務

対外業務では、取引先の対応状況に合わせ、インターネットFAX、電子データ交換(EDI: Electronic Data Interchange)、クラウドの電子契約・見積・請求管理システムなどの導入が有効です。

しかしながら、異なる種類のシステムを同時期に導入するのは費用面・運用面での負担が大きくなるため、それらの価格や使用頻度等を考慮して検討するのがよいと考えます。企業・組織の負担を減らすためにも、今後のシステム標準化や統合が求められる領域だと言えます。

解決策の具体例

ここでは、ペーパーレス化の解決策の具体例としてワークフローシステム、インターネットFAXおよび電子データ交換(EDI)を紹介します。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、電子化された申請書や通知書を、あらかじめ決められた作業手順(決裁ルート)に従って順次配信し、決裁処理を行うシステムです。

下図で示したように、紙で運用されるワークフローでは、申請時に「申請書を探す手間がかかる」、申請受付の「担当者を探す(調べる)手間がかかる」、さらに、承認者が直ぐに処理できない場合には「書類が溜まり承認が遅れる」などの問題があります。

また、受付後の「書類がどこにあるか分からない」すなわち、進捗状況が不明なため、業務が遅延することもあり得ます。さらに、承認後に管理帳票に入力したり、書類を保管したりする手間も発生するなど、様々な問題が挙げられます。

これら問題の解決には、ワークフローシステムを導入して申請・受付・承認・保管のすべてのプロセスの電子化および自動化を図るが効果的です。下記にワークフローシステムを活用してペーパーレス化を実現した例を示します。

  • 申請時は目的別に準備された「電子化された申請フォーム」に入力して申請する。
  • 申請フォームは受付者に「自動的に転送・通知」される。
  • 受付者は申請内容をチェックして受付完了する。
  • 申請フォームは、受付時と同様に承認者に自動的に転送・通知される。
  • 承認者は申請内容を確認して承認する。
  • 処理結果が申請者に自動的に通知され、同時にデータが所定の場所に保管される。

ワークフローシステムを活用した際の、代表的なメリットは次のとおりです。

  • 必要書類が明確となり書類を探す手間がなくなる。
  • システムにより形式的な入力ミスが防止できるため差戻し再提出が減る。
  • 進捗管理が容易になる。
  • 保管の手間削減できる。
  • 検索性が高い(様々な条件で検索できる)。

インターネットFAX

インターネットFAXは、パソコンとインターネットを使ってFAXのやりとりを行う仕組みであり、相手が通常のFAX機でも送受信できます。インターネットFAXの仕組みと特徴は次のとおりです。

FAXを送信するには、メールに文書ファイルを添付、インターネットFAX専用の宛先を指定して、通常のメールと同じように送付するだけです。FAXを受信したときは、相手のFAX内容がメールの添付ファイルとして送られてきます。通常のメールと同じ操作であるため違和感なく使用できるのが特徴です。また、スマートフォンでも受信できるので、外出先でのFAXの確認も可能です。

電子データ交換(EDI)

EDIとは、見積から請求までの企業間の取引データをネットワーク経由で交換する仕組みのことです。従来の受発注業務とEDIを使用したときの違いを次に示します。

従来(EDI未使用)の受発注業務では、取引先との間で郵送やFAXなどを使用し、紙による受発注情報のやりとりを行います。また急ぎのときなど、電話で受発注情報を伝える場合もあります。そして受発注情報は管理のため、自社システムへ手作業で入力しています。

EDIを導入した場合には、受発注情報は業務システムと連携して自動的に送受信され、システムの画面で一元的に操作・表示ができるため、郵送・FAX・電話等でのやりとりおよびデータ入力作業が廃止できます。


以上、ペーパーレス化の具体例としてワークフローシステム、インターネットFAXおよび電子データ交換(EDI)を紹介しましたが、その他クラウドの電子契約や見積・請求管理システムなどのシステムも利用できます。自社の環境、業務スタイルに合わせて導入の検討をお薦めします。